バスで江戸時代へタイムスリップ

バスで江戸時代へタイムスリップ

東京駅八重洲口と南千住車庫前(一部南千住駅西口)を結ぶ都営バス東42甲は、ある意味最も江戸情緒を感じさせてくれる路線バスだといえる。その停車場名を見ていくと、八重洲、日本橋、室町、本町、小伝馬町、東神田、馬喰町、浅草橋、蔵前、駒形橋、浅草、花川戸、今戸、清川、南千住と、古典落語や時代劇によく登場する地名がずらりと並んでいる。

 

朝晩のラッシュ時以外は車内も割と空いているので、席に座って外を見ながら、聞き覚えのある地名のアナウンスとともにバスが停まるたびに、その地名が登場する落語やドラマのシーンと現在の街の風景を頭の中で比べることができるのだ。

 

小伝馬町あたりまでは殺風景なビルが並ぶオフィス街だが、馬喰長あたりが繊維問屋、浅草橋蔵前あたりは人形やおもちゃの問屋と特徴のある商店がビルの合間に交じっているのが確認できる。このあたりからバスが大きな交差点を渡るたびに、バスの右手のほうに両国橋をはじめとする隅田川にかかている橋がちらちらと認められるのも楽しい。

 

そしてレトロな外観が復活した浅草松屋まで来ると、街の風景は一気に昭和のにおいをおびてくる。客も半分以上はここで新しく入れ替わることが多い。このへんから乗ってきたお年寄りの会話を聞いていると、普段耳にしている「標準語」とは明らかにニュアンスの違う江戸言葉が耳に入ってくることも多い。

 

観光客が目立つ浅草界隈を過ぎて言問い通りを越えると、急に手々物の背が低く、色も黒みを増してきて、山谷を中心とした古い町並みが続いていく。あしたのジョーの舞台として有名になった泪橋を過ぎると、バスは複数の線路にさえぎられた行き止まりの停留所に停まる。
ここが終点の南千住車庫前だ。

 

バスを降りたところに立っている大きな跨線橋を渡って線路の向こう側へ降りると、墓がたくさん集まった寺が見えてくる。鈴ヶ森と並ぶ江戸時代の刑場、小塚原があったところだ。目の前の大通りは人骨が託さぬ待ってることからコツ通りと呼ばれている。並んでいる墓の中には吉田松陰や橋本佐内などの名前が見られるし、杉田玄白や前野良沢が初めて人体解剖を行ったという記念碑も建っている。

 

しばし江戸時代へのタイムスリップ気分を味わった後は、バスで浅草まで戻るもよし、目の前の日比谷線で上野に行くもよし、いずれにしても老舗のそばやでそば前を肴に一杯飲みたい気分になってしまう。